アジャイル開発とは?スクラムでの進め方と始め方をわかりやすく解説

「アジャイルで進めましょうと提案されたが、判断できる材料がない」

「スケジュール通りに終わったのに、思ったほど成果につながらなかった」

アジャイル開発について調べている方の多くが、こうした状況にいます。

アジャイル開発とは、短いサイクルで作りながら確かめ、変化に対応しながら価値を届けていく進め方です。そして、アジャイル開発が変えるのは、作り方だけではなく、「何をもって成功とするか」という定義そのものです。

この記事では、アジャイル開発の基本を押さえたうえで、スクラムで実際に1サイクルを回すときの流れを解説します。あわせて、エンジニア以外の関わり方、AI時代に起きている変化、始め方までを取り上げます。

個別のイベントの運営手順や、ツールの設定方法は扱いません。「アジャイル開発がなぜ必要なのか」「自分たちの仕事にどう関わるのか」を確かめたい方に向けた内容です。

アジャイル導入でズレないための考え方

この記事を読んで、「うちのチームも同じ状態かもしれない」と感じた方もいるのではないでしょうか。

アジャイルがうまくいかないとき、その原因は手法ではなく「前提」が変わっていないことにあります。

こうしたズレに気づくための観点を資料にまとめています。気になる方は確認してみてください。


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目次

アジャイル開発とは?

アジャイル開発とは?

アジャイル開発とは、短い期間で「作る→確かめる→次に活かす」を繰り返しながら、変化に対応して価値を届けていく進め方です。

基本のサイクルは、次の3つです。

アジャイル開発の基本サイクル
  • 小さく作る:すぐに使用できる状態の成果物を、小さな単位で完成させる
  • 確かめる:実際に動くものを見て、使われるかどうか、方向は合っているかを確認する
  • 次に活かす:確かめた結果をもとに、次に何を作るか、どう進めるかを判断する

このサイクルを理解するうえで、押さえておきたいことが2つあります。

  1. 計画の達成と成功は、同じではない
  2. アジャイル開発はソフトウェア開発に限らない

まずは、なぜこの進め方が必要なのかを見ていきます。

1. 計画の達成と成功は、同じではない

1. 計画の達成と成功は、同じではない

なぜこの進め方が必要なのでしょうか。多くの現場では、こんなことが起きています。

スケジュール通りに完成した。要件通りに作った。それなのに、実際にはあまり使われない。届けたかった価値につながらない。

たとえば、半年かけて完成させた機能が、ふたを開けてみるとほとんど使われなかった。こうした経験は、多くの現場にあります。作る前の予測だけでは、使われるかどうかは分からないためです。

計画は立てた時点の予測にもとづいています。しかし、作っている間にも状況は変わり、実際に動くものを見てはじめて分かることが出てきます。

重要なのは、計画どおりに完成させることではなく、作ったものが実際に使われ、価値になっていることです。

これは、計画が不要だという意味ではありません。アジャイル開発でも計画は立てます。そのうえで、確かめた結果に合わせて、計画そのものを更新し続けます。

2. アジャイル開発はソフトウェア開発に限らない

2. アジャイル開発はソフトウェア開発に限らない

「開発」という名前がついていますが、この進め方はソフトウェア開発に限りません。

作りながら確かめる必要がある仕事であれば、同じ考え方が使えます。社内の業務手順の見直しや、サービスの改善でも、小さく変えて、結果を確かめて、次を判断するという進め方は機能します。

アジャイル開発の進め方|スクラムで回す1サイクル

アジャイル開発の進め方|スクラムで回す1サイクル

アジャイル開発は考え方であり、それを実際のチームで回すための手法がいくつかあります。もっとも広く使われているのがスクラムです。

スクラムは、アジャイルの考え方を「役割とイベント」に落とし込み、チームで再現しやすくした枠組みです。

スクラムで1サイクル(スプリント)を回すときの流れを、4つに分けて解説します。

  1. 役割|誰が何を判断するか
  2. 計画|プロダクトバックログとスプリントプランニング
  3. 開発|短いサイクルの中で、毎日確かめながら進める
  4. 確認と改善|スプリントレビューとふりかえり

スクラムの全体像と、形だけで終わらせないための導入のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

1. 役割|誰が何を判断するか

1. 役割|誰が何を判断するか

スクラムには、プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発者という3つの役割があります。

プロダクトオーナーは、「何を先に作るか」を判断する人です。作りたいものの順序に責任を持ち、チームが今もっとも価値のあるものに取り組める状態を保ちます。

開発者は、その順序に沿って「どう作るか」を判断し、使用できる状態の成果物を完成させます。

スクラムマスターは、この2つの判断がスムーズに回るように、進め方の障害を取り除いていきます。

役割は肩書きではありません。重要なのは、「何を作るか」と「どう作るか」の判断が、それぞれ誰の手にあるかがはっきりしていることです。

プロダクトオーナーとスクラムマスター、それぞれの役割と現場での関わり方については、以下の記事で詳しく解説しています。

2. 計画|プロダクトバックログとスプリントプランニング

2. 計画|プロダクトバックログとスプリントプランニング

何を作るかは、プロダクトバックログというリストで管理します。プロダクトバックログは、作りたいものを価値の高い順に並べたリストです。

すべてを管理するためのリストではなく、「次に何をやるか」を選ぶためのリストです。

スプリントの初めには、スプリントプランニングを行います。ここでチームは、プロダクトバックログの上から「今回どこまで作るか」を決めます。

決めるのは作業の割り当てではなく、「このスプリントで何を達成するのか」です。たとえば、「新規ユーザーが初回利用を完了できる状態にする」を今回の達成目標に置き、そのために必要なアイテムを上から選ぶ、といった形で進めます。

重要なのは、細かい計画を作ることではなく、チーム全員が「今回何を達成するのか」を理解して動き出せる状態になっていることです。

プロダクトバックログの捉え方と、スプリントプランニングの進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。

3. 開発|短いサイクルの中で、毎日確かめながら進める

3. 開発|短いサイクルの中で、毎日確かめながら進める

スプリントは、最長でも1か月以内の短い区切りです。この期間の中で、設計・実装・テストまで行い、使用できる状態の成果物を作ります。

ここで大切なのは、スプリントの中身を工程で分けないことです。「今回は設計だけ」「次は実装だけ」と分けてしまうと、区切りは短くても、進め方はウォーターフォール(工程を順番に進める従来の進め方)のままです。

1つのスプリントの中で、小さくても完成まで持っていきます。

進めている間は、毎日短い時間で状況を確かめます(デイリースクラム)。昨日何をしたかを報告する場ではありません。「今の状況で、何をどう進めるか」をチームで確認し、計画を調整する場です。

重要なのは、区切りを短くすることではなく、その区切りの中で「使用できる状態」まで作り切ることです。

スプリントでよくある誤解と、現場で陥りやすいパターンについては、以下の記事で詳しく解説しています。

4. 確認と改善|スプリントレビューとふりかえり

4. 確認と改善|スプリントレビューとふりかえり

スプリントの終わりには、スプリントレビューを行います。作った成果物を実際に動かして、関係者と一緒に確かめる場です。

進捗を報告する会議ではありません。動くものを見て、「このまま進めるか、方向を変えるか」を判断し、プロダクトバックログを更新します。

続いて、チームでふりかえりを行います。ここで見直すのは、成果物ではなく進め方です。「今回うまくいったこと」「次のスプリントで変えること」を決めて、次のサイクルに入ります。

この2つがあることで、作ったものと進め方の両方が、サイクルごとに更新されていきます。重要なのは、サイクルを回すことではなく、サイクルのたびに判断が更新されていることです。

スプリントレビューを報告会で終わらせないための進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。

アジャイル開発に、エンジニア以外はどう関わる?

アジャイル開発に、エンジニア以外はどう関わる?

ここまでの流れを見て、「自分はエンジニアではないので関係が薄い」と感じた方もいるかもしれません。

実際は逆です。アジャイル開発が機能するかどうかは、エンジニア以外の関わり方に大きく左右されます。

関わり方は、大きく3つあります。

  1. 「何を先に作るか」の判断に関わる
  2. 動くものを見て、フィードバックする
  3. 途中で判断を変えられる状態を、組織の側でつくる

それぞれの関わり方を、順に見ていきます。

1. 「何を先に作るか」の判断に関わる

1. 「何を先に作るか」の判断に関わる

プロダクトバックログの順序は、技術だけでは決まりません。どの機能が事業にとって価値が高いか、利用者は何に困っているか。この情報を持っているのは、企画やマーケティング、事業部門の担当者です。

要件をまとめて渡して、あとは完成を待つ。この関わり方では、作っている間に状況が変わっても、順序を見直す機会がありません。

優先順位の判断に、継続的に関わり続けることが求められます。

2. 動くものを見て、フィードバックする

2. 動くものを見て、フィードバックする

スプリントレビューは、エンジニア以外がもっとも力を発揮できる場です。資料や説明ではなく、実際に動くものを見て、「これは使われるか」「方向は合っているか」を判断できます。

事前の予測だけでは分からなかったことが、動くものを見るとはっきりします。この気づきを次のスプリントに反映できるかどうかが、価値につながるかを分けます。

3. 途中で判断を変えられる状態を、組織の側でつくる

3. 途中で判断を変えられる状態を、組織の側でつくる

現実の組織では、承認の流れやルール、契約の形によって、途中で判断を変えることが難しい場合もあります。こうした仕組みの多くは、「最初に決めて、その通りに進める」前提で設計されているためです。

すべてを一度に変える必要はありません。まずは、自分たちの関わる範囲で「途中で見直せる余地」がどこにあるかを確かめてみてください。

重要なのは、職種ではなく、「作りながら確かめる」進め方に、判断する側として関わっているかどうかです。

開発チームの外側にある待ち時間を減らし、組織そのものを変化に適応できるように設計する考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

AI時代のアジャイル開発はどう変わる?

AI時代のアジャイル開発はどう変わる?

AIの活用によって、コードを書く速度は大きく上がりました。これまで数日かかっていた実装が、数時間で形になることも珍しくありません。

この変化は、アジャイル開発の1サイクルの中身を変えつつあります。

  1. 速くなったのは「作ること」、追いつかないのは「確かめること」
  2. 確認の単位を小さくし、機械的な確認はテストに任せる

それぞれのポイントを、順に見ていきます。

1. 速くなったのは「作ること」、追いつかないのは「確かめること」

1. 速くなったのは「作ること」、追いつかないのは「確かめること」

作られたものを確かめ、判断する速度は、作る速度と同じようには上がりません。

実際、複数の生成AIに並行して実装させている開発現場では、生成AIの数を増やしても、上がってきたものを読み、動かして確かめ、取り込む側が追いつかず、AIのほうが待つ状態になるという例が出ています。

生成AIが作る量が増えるほど、レビューや確認に使う時間の比重は大きくなっていきます。

もう一つ、生成AIを使う現場で見えてきたことがあります。「完了しました」という報告と、実際に確かめて通っていることは、別だということです。報告どおりに動いていないことは珍しくなく、確かめる工程を省くことはできません。

これは、アジャイル開発が機能しなくなったということではありません。人の仕事の中心が、「作ること」から「確かめて判断すること」へ移っているということです。

動いているか、そして使われて価値になっているか。どちらを決めるのも、確かめる工程だからです。

2. 確認の単位を小さくし、機械的な確認はテストに任せる

2. 確認の単位を小さくし、機械的な確認はテストに任せる

作る速度が上がった今こそ、大きなまとまりで作ってあとから確認するやり方は行き詰まります。

小さく作って、その都度確かめる。確認のまとまりが小さいほど、1回の判断は軽く、確実になります。

たとえば、1週間分の変更をまとめて確認するより、半日分ずつ確認する方が、見落としは減ります。また、変更や問題を1週間おいたままにすると、開発スピードの速さから仕様が変わり、変更点や問題箇所の根本から見直す必要すらでてくる場面もあります。

機械的に確認できる部分は自動テストに任せ、人は「これは価値につながるか」という判断に集中する。この分担も、これからのアジャイル開発の一部です。

ただし、テストが全て通っていても、実際に動かすと機能が止まっていた、という壊れ方は残ります。作った本人以外の目で動くものを見る工程は、AIが作る時代でもなくなりません。

AIが作ったものをそのAIに確かめさせるだけでは、この工程の代わりにはなりません。前のセクションで見た「動くものを見て、フィードバックする」関わり方は、AI時代にむしろ重みを増しています。

AIで浮いた時間を「もっと作ること」に使うのか、「確かめて、次を判断すること」に使うのか。ここが、AI時代のアジャイル開発の分かれ目です。

テストで「安心して変更できる状態」をつくる考え方と、生成AI時代にアジャイルが重要になる理由については、以下の記事で詳しく解説しています。

アジャイル開発はどう始める?

アジャイル開発はどう始める?

アジャイル開発の導入は、組織全体の制度を変えるところから始める必要はありません。1つのチーム、1つの取り組みから始められます。

ただし、始める前に押さえておきたい注意点が1つあります。サイクルを回すだけでは、アジャイル開発にはならないということです。

サイクルは短く区切ったものの、中身は要件定義、実装、テストと工程で分かれている。途中で分かったことがあっても、最初に決めた仕様は変えられない。こうした状態では、サイクルの形だけがアジャイルで、進め方は以前のままです。

アジャイル開発がうまくいかない要因の多くは、技術ではありません。判断のしかたと、チームでの対話のしかたにあります。

だからこそ、向き不向きを最初に判断しきろうとするより、自分たちの状況で「途中でどこまで判断を変えられるか」を確かめることから始めてみてください。契約や意思決定の仕組みで変えられる範囲が狭いなら、その範囲の中で小さく始めれば十分です。

たとえば、1か月かけて仕上げる予定のものがあるなら、最初の1週間で骨子まで作り、関係者に一度見てもらう。途中で一度確かめるだけでも、進め方は変わり始めます。始め方としては、それで十分です。

アジャイルという考え方そのものや、向き不向きの捉え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

アジャイル開発に関するよくある質問

アジャイル開発について、よく寄せられる質問をFAQ形式で整理しました。

アジャイル開発を簡単に言うと?

一言で言えば、「小さく作って、確かめて、次を決める」を繰り返す進め方です。

最初に全部を決めて一気に作るのではなく、短い区切りごとに動くものを見て、作るものと進め方を更新していきます。「速く作る手法」と説明されることもありますが、目指しているのは速さそのものではなく、作ったものが実際に価値になっている状態です。

アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いは何ですか?

ウォーターフォール開発は、最初にすべての要件を決め、設計、実装、テストと順番に工程を進めていく進め方です。工程の順番の違いとして説明されることが多いですが、より大きな違いは「何を成功と考えるか」にあります。

ウォーターフォール開発が目指すのは、最初に合意した計画をその通りに完成させることです。一方、アジャイル開発は、作ったものが実際に使われ、価値になっていることを目指します。どちらかが欠陥のある手法というわけではなく、どちらの前提を選ぶかの違いです。

ウォーターフォール開発の特徴と、アジャイルとの比較でよくある誤解については、以下の記事で詳しく解説しています。

アジャイル開発のメリット・デメリットは何ですか?

最大のメリットは、変化への対応力が高まることです。短いサイクルの区切りごとに動くものを見て判断を見直せるため、途中で前提が変わっても、変化がそのまま大きな手戻りにはなりません。

私たちが2025年に実施した調査でも、アジャイルを導入したチームの90%が「変更対応のしやすさが向上した」と回答しています(アジャイル導入調査レポート)。一方、デメリットとして挙げられやすいのは、全体の見通しを最初に固めにくいことです。ただし、これは手法の欠陥ではなく、「途中で判断を変える」前提を選んだことによる裏返しです。

メリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。

アジャイル開発とスクラム開発の違いは何ですか?

アジャイル開発は「作りながら確かめて、変化に対応する」という考え方であり、スクラムはその考え方を実践するための具体的な枠組みです。対立する2つの手法ではありません。

スクラム開発と呼ばれるものは、スクラムという枠組みを使ったアジャイル開発を指しています。まずアジャイルという考え方があり、それを実際のチームで回す方法の1つがスクラム、という関係です。

スクラム以外にどんな手法がありますか?

代表的なものに、XP(エクストリーム・プログラミング)とカンバンがあります。XPはテストや設計といった技術面の実践に、カンバンは仕事の流れを見える化して滞りをなくすことに、それぞれポイントを置いています。

どれも「小さく作って確かめる」という土台は同じです。手法の選択に迷うよりも、まず1つを小さく試し、自分たちに合わせて調整していくことをおすすめします。

まとめ:アジャイル開発は「成功の定義」を変える進め方

アジャイル開発とは、短いサイクルで作りながら確かめ、確かめた結果に合わせて判断を更新し続ける進め方です。

重要なのは、計画どおりに完成させることではなく、作ったものが実際に使われ、価値になっている状態を目指すことです。この定義に立つと、スクラムの各イベントも、エンジニア以外の関わり方も、AI時代の変化も、一本の線でつながって見えてきます。

最初からすべてを変える必要はありません。まずは次の仕事で、ひとまとまりを小さく区切り、途中で一度確かめることから始めてみてください。

小さく試す中で、チームとしての進め方を本格的に変えたいと感じたら、体系的に学ぶ段階です。ABIでは、スクラムを実践を通じて学べる研修を提供しています。以下の記事から、目的に合った研修を確認してみてください。

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