スクラムマスターとは?役割、やること PMとの違い

「スクラムは、スピードと開発者の幸福を追求するゲームです。スクラムマスターは、ビジネスリーダーやチームにスクラムというゲームの楽しみ方を教えます。」

当社トレーナージョーが最初に伝えるメッセージです。
スクラムマスターは、スクラム手法を教え、チームの自律的な行動を引き出し、成果を最大限にします。結果スピードが向上し、開発者をより幸福にします。いかに向上することができるか、幸福度を高めることができるのか。それを追及するシンプルで楽しいゲームなのです。

スクラムマスターの仕事とは?何をするの?

スクラムマスターの仕事とは

スクラムマスターは、チームが合意した目標達成のために、スクラム手法および原則を実践させます。スクラムマスターはスクラムの方法を一番知っている人物であるため、コーチをしたり、スクラムフレームワークが上手く回るようファシリテーションをします。また、チームスピードの妨げになる障害物を取り除きます。

スプリント計画の進行

開発者は、決定されたスプリントゴールを達成する技術的な計画を立てます。これをスプリントバックログと言います。スプリントバックログの計画、実行、管理は、開発者が自ら行います。スクラムマスターはそれを支援します。「このスプリントのゴールは何か?」「このスプリントで何を完成できるか?」「どのように作業するのか?」などを決めていきます。スクラムマスターはそれをサポートします。

デイリースクラムの開催

デイリースクラムは、開発者のための15分のイベントです。進捗を確認し、1日の作業を再計画します。進め方や、チーム内のコラボレーションなど、スプリントゴールへの達成方法を見直します。必要に応じてスプリントバックログを再検討します。スクラムマスターはそれを支援します。

スプリントレビューの開催

スプリントレビューは、デモとも言われることもありますがスプリントのインクリメントを、ステークホルダーが見る場です。完成の定義を満たしているかどうかを基準に、プロダクトオーナーが事前に確認済みの状態で行うため、スプリントレビューはステークホルダーとチーム全員が行うお祝い(お披露目)の場ということになります。スクラムマスターはそれを支援します。

スクラムチーム内外の問題解決

スクラムマスターは、スクラムチーム内外で発生しチームの活動やスピードを阻害する問題の迅速な解決を促します。プロダクトオーナーに依頼したり、開発者に手を動かしてもらうこともあるかもしれませんが、ロードブロッカーとなりうる障害を取り除く責任はスクラムマスターにあります。

プロダクトバックログの改善

プロダクトバックログアイテムを改善したり洗練させる活動をリファイメントと言います。プロダクトバックログの要件を変更したり更新します。5つのイベントは実施の順番が決まっていますが、「リファイメント」は「イベント」ではなく、「アクティビティ」で、順番は決まっておらず、いつでも行うことができます。
おすすめは「リファインメントカフェ」です。チームメンバーそれぞれが好きな飲み物を手に、毎日15分間、プロダクトオーナーと一緒にプロダクトバックログを編集、更新します。

スクラムマスターの役割と責任

スクラムマスターの役割と責任

スクラムマスターはスクラムを一番知っている人物として、主に以下の責任を担います。

アジャイルコーチとしてチームをまとめる

スクラムマスターはアジャイルコーチとして、チームがアジャイルを理解し、実践できるようコーチします。当社トレーナーのJoeは、スクラムはゲームであり、プロダクトオーナーは審判、スクラムマスターはコーチ、開発者はプレーヤーのようである、と例えています。

プロダクトバックログを管理しプロダクトオーナーをサポート

スクラムマスターは、ビジネスゴールであるプロダクトバックログを洗練する活動(リファイメント)をサポートとし、プロダクトオーナーと開発者を助けます。

スクラム手法の共有、指導、トレーニングを行う事で組織力を強化

スクラムには、マネージャーという存在がいません。仕事をアサインしたり、指示をする存在がいません。そのため、開発者自ら自律的に自己組織化し作業を行いリリースします。チームに対しスクラム手法を共有、指導、トレーニングすることで、自律的に動くことができるチーム形成を促します。

スクラムマスターの目標

スクラムマスターの目標

従来のプロジェクトマネージャーとは異なり、チームの自己組織化を促すことが大きな目標の一つです。チームに当事者意識と責任感を持たせ、チームの問題解決力を上げるように促進します。

スクラムチームの現場でアジャイルとスクラムのエキスパートを目指す

スクラムチームの現場でスクラムを一番よく知っているマスターとして、チームがスクラム原則を徹底実践できるよう、導きましょう。

スクラムの知識を広め、会社組織全体をアジャイルにしよう

アジャイルへの切り替え方法は1つではありません。トップダウン型アジャイル変革する方法もあるでしょうし、ボトムアップ型アジャイル変革する方法もあるでしょう。まずは社内で有志を集めチームを結成し、パイロット的に成功事例を作る。そして経営層にアジャイルを理解してもらうなど、できるところからアジャイル企業への切り替えを行っていきましょう。

スクラムマスターとプロダクトマネージャーの違い

スクラムマスターとプロダクトマネージャーの違い

スクラムには、マネージャーの役割はありません。プロジェクトマネージャーは、リスク、タイムライン、スコープ、コスト、マネジメントに責任を持っています。一方スクラムマスターは、スクラムのゲームを教え、チームを促進することに責任があり、開発者は作業の進捗や傾向を自己管理し、報告する責任があります。スクラムでは「自己組織化」が重要であるため、マネージャーの指示で要求に応えるのではなく、自律的に行動できるよう責任やリスクも分散されています。

スクラムマスターは必要か?

スクラムマスターは必要か

スクラムマスターはスクラム開発のコアの存在であり、スクラムの基本概念を理解し、スクラムチームへスクラムを導入するためにコーチングを行います。また、スピードのあるチームを運営していくためには「心理的安全性」が保たれたチームによる「自己組織化」が必須になります。そのため、チームのコーチング、ファシリテーション、障害を取り除く等を行うスクラムマスターは、チームにとって必要な役割です。

プロダクトバックログを使用しプロジェクトを分割し、優先タスクを判断する必要性

開発の現場において、優先タスクの設定と判断に苦労するケースはよくあります。
スクラムの原則を理解するスクラムマスターがいることで、プロダクトバックログに基づきプロジェクトを分割し、優先タスクを判断しながらアジャイル開発を進める事ができます。

開発チームがプロダクトバックログの設定、管理、進捗が上手くいかず、優先タスクの判断に苦労しているなら、スクラムマスターの導入の必要性を検討すると良いでしょう。

コーチングとしてのスクラムマスターの必要性

スクラムマスターが、プロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャーと異なる点は、アジャイルチームのコーチング役として、チームメンバーのコーチとして接します。

組織のヒエラルキーに沿ったピラミット上層部のリーダーと違い、スクラムマスターのリーダーシップはコーチングにあります。チームメンバーがより力を発揮できるよう導くチームのコーチとしてスクラムマスターの役割は重要です。

スプリントミーティングの進行役としての必要性

アジャイル開発の現場のメンバーとプロダクトを理解するスクラムマスターがスクラムチームの進捗会議の進行を行う事で、より円滑な進捗報告、問題提起や改善を行う事ができます。
また、スクラムマスターは組織にスクラムの価値、考え方を広める上でも重要な役割を担います。スプリントイベントの進行役の場は、そうしたアジャイル・スクラムの認知度を上げ組織力をアップさせる機会の場にもなるでしょう。

スクラムマスターのやること・責務に関するFAQ

スクラムマスターの役割はスプリントプランニング(計画)の開催や進行以外にチーム内外に生じる問題解決もあります。

実際のアジャイル・スクラム開発の現場でよくあるケースを想定したスクラムマスターとしてのやること、対処の仕方をケーススタディとして事例を上げてみます。

良くある問題・課題をジョーがアドバイス!

チームが見積もりを詳細まで詰めすぎ時間が掛かります。スクラムマスターのやることは?

S、M、L、XL等を使ったざっくり見積りを使うよう提案してみましょう。ずれたとしても1スプリント内で調整可能な程度に分割するよう促します。ポーカーのようにゲーム感覚で見積もりができるような雰囲気にするといいかもしません。

Devチームがクロスファンクショナルではない時にスクラムマスターのやることは?

PBIを上から作業しづらくなり、ボトルネックが生まれます。得意分野にこもってしまうとクロスファンクショナルになりづらいため、Mob作業を提案します。Mobも役割を決め、RPGゲームのように楽しく実施できるよう教えます。

チームに熱意が感じられない時にスクラムマスターのやることは?

なぜモチベーションが高まらないのか、必要があればメンバー個別に話を聞いてみます。チームが共通の達成ゴールを知らないかもしれませんし、知っていても共感していない場合があるかもしれません。または他の問題を抱えているかもしません。例えば、チームが権限が与えられていないため、 改善案を出しても実現しなかったり時間がかかってしまうと、モチベーションが損なわれます。スクラムマスターとしては、チームにより決定権限が持てるよう、プロダクトオーナーや組織のステークホルダーに相談し改善します。

チームメンバーの育成としてスクラムマスターのやることは?

心理的安全性を高めて成功体験を与えてください。最初は簡単な仕事を与えたり、モブワークで一緒に仕事を完成させ、自信をつけさせましょう。

チームメンバーがイライラしたり関係性が悪いときにスクラムマスターのやることは?

心理的安全性を高めることはとても大切です。レトロスペクティブでイライラの原因を聞いたり、チームメンバーにとって何が幸福に近づくのかを聞いてもいいでしょう。そしてスクラムチームはアイデアを共有することで、健全な議論が促進されます。これにより、互いの視点を理解して、より良いアイデアが促進され、関係性も良好に近づくでしょう。

同僚とやり方、考え方にズレが生じ賛同できない時にスクラムマスターのやることは?

特定のアイデアの長所と短所のリストを作成し、双方のアイデアを評価することで、解決がしやすくなります。お互いの意見に耳を傾け、お互いを理解し、対立をできるだけ早く解決できるようにする必要があります。

問題の原因がチームの外にある場合のスクラムマスターとしての対処法は?

問題や課題の根本原因に注目します。問題解決できるアイデアがないか、他のチームメンバーと話し合う必要があります。そしてチーム外のメンバーとも協力して問題解決に取り組みます。

まとめ

スクラムマスターの仕事を多岐にわたりますが、「スピードと幸福度」を追及するゲームである、ということを是非忘れずに、スクラムマスターが中心となり、チームにスクラムの原則、ルールの実践を促してください。結果としてチームの自己組織化が促進され、作業スピードが向上し、開発者のみならず顧客を中心としたステークホルダー達の幸福度も上がることでしょう!