プロダクトバックログとは|例や書き方も解説

プロダクトバックログとは、目標達成に必要なアイテムやフィーチャーを、優先順位をつけてリスト化したものです。

一般的に、開発中の製品ごとに 1 つのプロダクトバックログを用意し、そのバックログに 1 つのチームを割り当てることになっています。

プロダクトバックログは、製品をどのように進化させていくかという計画やビジネスゴールです。
開発者は、プロダクトバックログアイテムを使って、スピーディに結果を出すことができます。

アジャイルでは、プロダクトバックログアイテムは変化します。そしてプロダクトバックログのすべてのアイテムが完了するわけではありません。

優先順位をつけながら、プロダクトバックログを改良していく必要があります。

プロダクトオーナーは、プロダクトバックログの所有者であり、責任者です。

Joe Justice

プロダクトバックログの優先順位については、下記の記事も一緒に読んで参考にしてください。

アジャイルにおけるプロダクトバックログとは

プロダクトバックログとは

アジャイル開発におけるプロダクトバックログは、プロジェクトまたは製品開発の一部として実装する必要がある成果物 (新機能など) の優先順位付けされたリストです。

また、ビジネスにおけるゴールです。ウィッシュリストともいえるでしょう。

プロダクトバックログの典型的なアイテムには、機能追加や、バグ修正などが含まれます。

概要

プロダクトバックログは、どのようなものでしょうか。

「バックログ」とは、「未処理リスト」を指します。
つまり、「プロダクトバックログ」は、「プロダクトの残務・未処理リスト」といえます。

スクラムでは、この「アイテム」のことを「プロダクトバックログアイテム」といいます。
アイテムは適切な大きさになっており、優先順位もつけられています。

つまりプロダクトバックログとは、プロダクトに必要なアイテムが優先度順に並んでいる未処理作業のリストと言えます。

スクラムのかんたんに分かる解説についても参考にしてください。

役割

プロダクトオーナーは誰が担うのでしょうか?プロダクトのことを良く知っている、欲しいものがわかっている顧客が担うことが理想です。

顧客でない場合は、チームのプロダクトオーナーは顧客のように考えるようにします。スクラムチームのメンバー全員が、プロダクトオーナーをサポートします。

チームの意見が異なり決定ができない場合は、プロダクトオーナーが決める必要があります。

多くの企業では、毎週、プロダクトオーナーの役割を担う人が変わります。トレーニングを受けていれば、誰でも交代でプロダクトオーナーになることができます。

プロダクトオーナーの役割については、下記の記事も参考にしてください

プロダクトバックログに含まれる要素

プロダクトバックログ 要素

プロダクトバックログには、一般的に機能、バグ修正、技術的負債、知識獲得、新機能のアイデア、機能の改善、設計変更、インフラストラクチャの変更などが含まれます。このようなプロダクトバックログアイテムは、製品に対してまだ割り当てられていない明確に分割された作業内容、大きなTo-doリストのことになります。

新機能

ニューフィーチャーとも言われます。フィーチャーは、ユーザーが価値を見出す製品の機能のことを指します。フィーチャーには、複雑なものや単純なものもあります。プロダクトオーナーはユーザー、顧客、ステークホルダーが何を最も必要とし求めているかを十分に理解しておく必要があります。

技術的負債

技術的負債とは、主にソフトウェア開発で今日、近道をしたために発生した後日やらなければならなくなる仕事のことを指します。開発者は通常、品質とスピードのバランスを取る必要があります。技術的負債は、近道することにより便利性を得られる分、後でその”つけ”を返済することになります。技術的負債は、バックログの下に追いやられてしまう傾向があります。また、メンテナンスの問題を指す言葉として使われることも多いです。

バグ

英語の「虫」から来ており、コンピューターのプログラム上の不具合やエラー、欠陥のことを指します。バグ修正はその名の通りバグを直す作業です。スクラムチームは、バグ修正に迅速に対応する必要があります。チームの現在のスプリントを中断するほど重要なバグもあれば、次のスプリントに回せるバグもありますが、チームがバグを忘れないように、プロダクトバックログの一番上に置いておくことが必要です。

プロダクトバックログのつくり方・書き方

プロダクトバックログ 作り方や書き方

プロダクトバックの作り方は以下の通りです。

手順1.プロダクトゴールを決める

手順1.プロダクトバックログを作る時、まずプロダクトゴールを決める必要があります。プロダクトのゴールとは「ビジョン」や「ミッション」のことです。インセプションデッキなどそれを明確化するフレームワークもあるため、利用してみてもいいかもしれません。

手順2.プロダクトバックログアイテムを作成し、プロダクトバックログに追加

手順1.でプロダクトのゴールを策定後、それを実現するためのプロダクトバックログアイテムを作成し、プロダクトバックログに追加していきます。追加は、プロダクトオーナーだけではなく、スクラムチームに参加している全員が行います。ユーザーストーリーのテンプレートを使う場合が多いです。

技術的な実装手段は開発者が決定します。

(ペルソナ)として
(機能)でできる
だから(ワクワクする理由・得られる価値)

手順3.プロダクトバックログアイテムに優先順位をつける

次に、手順2.で作成したプロダクトバックログアイテムに対して優先順位をつけていきます。優先順位がつけられないという場合、プロダクトバックログが大きすぎることも考えられるため、分割を検討します。

手順4.優先順位の高いプロダクトバックログアイテムを詳細化

最後に手順3.でつけられた優先順位が高いプロダクトバックログの詳細化を行い、開発者が開発することができる状態にします。

それには、プロダクトオーナーによる受け入れ基準を作成すること、また完了条件を定義し(非機能要件も含む)、スクラムチーム全員がその意味を理解することも含まれます。

プロダクトバックログの例

プロダクトバックログの例を示します。

  • 例1)ゲストが簡単にホテルの予約ができるようにしたい
  • 例2)投稿者がサイトで気軽に相談したい
例1)ゲストが簡単にホテルの予約ができるようにしたい
  • ゲストとしてホテルの予約をすることができる
  • ゲストとしてホテルの予約をキャンセルすることができる
  • ゲストとして予約日時を変更できる
例2)投稿者がサイトで気軽に相談したい
  • 投稿者として、相談や悩みを投稿できる
  • 投稿は公開モードと非公開モードを選択できる
  • サイト管理者は投稿者に返信することができる

プロダクトバックログの優先順位の付け方

プロダクトバックログ 優先順位

プロダクトオーナーは、プロダクトバックログに優先順位をつける必要があります。

優先順位を考える際、まずバックログアイテムに対し価値を見積もります。労力の見積もりは開発者が行います。

アイテムに依存関係がある場合、それは優先されます。それが終わったら、価値、労力をカテゴリーに振り分けます。高価値で低労力のものが最も優先され、低価値かつ高労力のものは優先度一番最後に置くか、可能であればバックログから削除します。

優先順位付けに役立つ手法の例
  • 狩野モデル(アップル社が使っていると言われる日本発のモデル。顧客満足度やサービスの品質要素を分類する方法)
  • アイゼンハワー・マトリクス(緊急度や重要度に応じて優先順位を付ける方法)

上記手法を使い、優先順位をつけていきます。

アジャイルにおけるプロダクトバックログのメリット

プロダクトバックログ メリット

プロダクトバックログのメリットは以下の通りです。

メリット
  • リスト化されているため、メンテナンスがしやすい
  • 優先順位をつけやすく、変化に合わせて変更できる
  • 長期的な視点でプロダクトを考えられる

プロダクトバックログとスプリントバックログの違いを比較

プロダクトバックログ

スプリントバックログは、1つのプロダクトバックログアイテムを、スプリント期間中に完了させるための作業をリスト・タスク化したものです。

プロダクトバックログは、スプリントバックログよりもサイズの大きいビジネスゴールです。

スプリントバックログ

スプリントバックログは、そのビジネスゴールを達成するための技術的作業も含めたリストとなります。

スプリントバックログの目的は、1つのプロダクトアイテムを達成することが目的となります。

プロダクトバックログの所有者(責任者)がPO(プロダクトオーナー)なのに対し、スプリントバックログの所有者はDev開発者(SMは開発者をコーチ)となります。

プロダクトバックログとスプリントバックログ比較表

スクロールできます
プロダクトバックログスプリントバックログ
概要スプリントサイズのビジネスゴール(機能やサービスの価値のあるかたまり)1つのプロダクトバックログを具体化したもの(技術リスト・タスクリスト)
所有者(責任者)PO(プロダクトオーナー)Dev開発者(SMは開発者をコーチ)
目的プロダクト価値を最大化を目的1つのプロダクトアイテムを達成することが目的

スプリントバックログの詳細は下記の記事も参考にしてください。

プロダクトバックログの見直し(メンテナンス)の重要性

プロダクトバックログ 見直し(メンテナンス)

以上の工程を経て、プロダクトバックログは完成します。プロダクトバックログは一度完成して終わりではなく、不確実性の高い世の中において、市場やニーズに合わせ常にメンテナンスをする必要があります。そうしなければ、意味のないプロダクトバックログになってしまいます。

優先順位のメンテナンス

優先順位の見直しはおそろかになりがちな部分です。これはプロダクトオーナーに責任があり、基本的には常に行う必要があります。しかし、プロダクトオーナーは忙しいことが多いため、効率的に優先順位のメンテナンスを行うためには優先順位の基準のメンテナンスを実施し、その変更の影響範囲内で優先順位を修正、更新することです。

プロダクトバックログアイテムのメンテナンス

プロダクトバックログアイテムのメンテナンスは、プロダクトバックログ自体の追加・更新・削除を行うことで実現できます。お薦めは「リファイメントカフェ」です。これは1日15分、プロダクトバックログアイテム1件を最新のものになっているかどうか見直す方法です。

プロダクトバックログまとめ

プロダクトバックログはスクラムにおいて、プロジェクトの成功に大きく影響を与えることがお分かり頂けたと思います。
プロダクトバックログは作成後も柔軟にメンテナンスすることができ、いつでも編集、削除、更新することができます。

プロダクトバックログはスクラムはプロダクトリリースのスピードを促進させ、プロダクトの成長を促します。ビジネスゴール達成には欠かせないものだと言えるでしょう。