スクラムにおけるデイリースクラムとは?アンチパターンや失敗例も解説

デイリースクラムはスクラムの重要なイベントの1つです。

進捗の確認という認識が強いデイリースクラムですが、「スプリントゴールの達成」において、デイリースクラムの目的はそれだけではありません。

また、もしあなたがスクラムマスターの立場であったり、スクラムマスターを目指しているのなら、デイリースクラムにおいてスクラムマスターがどう関わるべきかも理解しておくことが重要です。

この記事では、デイリースクラムの目的、やり方、流れを解説していますが、開発チームメンバーだけでなくスクラムマスターの立場からも参考になる視点でまとめています。

是非、参考にしてください。

目次

デイリースクラムとは

デイリースクラムとは

「デイリースクラム」とは、スクラムの5つのイベント「スプリント」「スプリントプランニング」「スプリントレビュー」「スプリントレトロスペクティブ」に並ぶ一つです。

デイリースタンドアップと呼ばれることもあり、毎日の短い15分の会議です。
日本語で言えば、朝会というところでしょうか。

この記事では、デイリースクラムの目的や、やり方について説明していきます。

目的

デイリースクラムは、チーム一丸でスプリントゴールを達成するための作戦会議のようなものです。
デイリースクラムの目的は、その日の作業を明確にし、計画を調整すること。また問題があれば迅速に解決に取り組むことです。

つまりデイリースクラムの重要なポイントは、”チームメンバーが昨日完了したことの作業の確認”ということではありません。”その日をどのように取り組み”、”チームの障害をどのように取り除くのか”など、先を考えることにあります。

デイリースクラムのルール

デイリースクラムは、チームのリズムを保つために同じ時間、同じ環境で開催されることが推奨されます。

基本ルール
  • 毎日同じ時間に開催
  • デイリースクラムのタイムボックスは15分を厳守
  • 開発者による開発者のための会である

デイリースクラムの時間は15分で同じ場所で開催

デイリースクラムは毎日行われるため、15分という短い時間を保ち、チームはそれを厳守するべきです。
また、場所や時間が日々変わってしまうと、スケジュールの確認などで余計なリソースを使ってしまいます。開催時間や場所は毎日同じにし、スクラムチームが開発に集中できる環境を意識しましょう。

デイリースクラムの参加者

スクロールできます

プロダクトオーナー

スクラムマスター

開発者
参加義務任意任意必須
発言権なしファシリテート限定あり
デイリースクラムの参加者

通常、スクラムマスター、プロダクトオーナーが、スプリントで開発者として作業していない場合は、デイリースクラムに直接参加しません。

ただし、開発者としてスプリントに参加していない場合は、プロダクトオーナーや、その他のステークホルダーも聞くだけの参加者として加わることができます。彼らは、スプリントゴールに向けた進捗状況を把握するために、参加したいと思うかもしれません。

スクラムマスターは、デイリースクラムを生産的にする方法と、15 分の時間内に完了する方法について、開発者を指導することもあります。

デイリースクラムの具体的やり方

デイリースクラムは15分のタイムボックスの中で、「スプリントゴールの達成」に向けて有効に時間を使わなくてはいけません。そのためには、事前準備も重要になります。
デイリースクラムのやり方の前に、デイリースクラムにおける事前準備について解説します。

デイリースクラムの事前準備

事前準備
  1. 自分のタスクの進捗状況を確認して、デイリースクラムでスムーズに報告できる様に準備する
  2. 他の開発メンバーと共有すべき事はないかの確認をする

自分のタスクの進捗状況を確認して、デイリースクラムでスムーズに報告できる様に準備する

デイリースクラムの時間は15分しかありません。デイリースクラム前に、報告する自分のタスクの進捗を確認しておくことは重要です。
開発メンバーで進捗確認の為にタスク管理ツールを使っている場合は、デイリースクラム前に最新の状態に更新しておきましょう。

他の開発メンバーと共有すべき事はないかの確認をする

他の開発メンバーと共有し話し合うべき事がないか、事前に確認しましょう。
デイリースクラムの時間だけでは足りない様な内容があれば、別途ミーティングを設定しましょう。

デイリースクラムのやり方・進め方

それでは具体的なやり方についてみていきましょう。デイリースクラムには決まったアジェンダというものは、現在ありません。

過去に指定されていた3つのデイリースクラムの質問は次のとおりです。

3つのデイリースクラムの質問
  • 昨日何をしましたか?
  • 今日は何をしますか?
  • 仕事を妨げる要因や障害はありますか?

この質問は、これからデイリースクラムを始めるチームには、有効だと思います。
しかしそれと同時に、形骸化してしまうという声を聞くこともあります。
その場合は、変化を加えてみたり、自由にアレンジしても問題ありません。

Joe Justice

スクラムはゲーム!変化を加えてみたり、自由にアレンジしても問題ありません。

デイリースクラムの改善事例|例えばどんな変化を加えてるチームがあるの?

デイリースクラムは原則15分のタイムボックスで行われますが、どうしても時間がオーバーしてしまったり、個人の進捗の確認に傾向しすぎて、全体進捗の確認の認識がチーム内で共有できなかったりと、うまく行かない事もあるでしょう。

デイリースクラムは、スクラムガイドの中でも厳密なやり方が決まっているわけではありません。

デイリースクラムも、アジャイルと同じ様に繰り返したり、試してみることで、改善を続けてみてください。いくつかの例を紹介します。

「昨日何をしましたのか?」の定型質問をやめる

「昨日何をしましたのか?」の定型質問をやめる事で、進捗の確認だけを目的としたような単純な進捗報告の時間を減らすことができるでしょう。
ただしスクラムボードは最新状態に保たれている必要があります。

スクラムボードの「ブロック」アイテムを開発メンバー間で事前共有

スクラムボードの「ブロック」アイテムを、事前に簡単に共有しておきます。そうすることにより、より多くの改善やアイデアが見つかるかもしれません。

より具体的な質問をして、議論の焦点を絞る

「昨日のハイライトを 2 つか 3 つ教えてください」など、より具体的な質問をして、焦点を絞ります。そうすることにより、簡潔に1人の会話を短くすることができます。

ネガティブな質問や議論をせず、どうすれば改善できるかをポジティブに話し合う場とする

後ろ向きな質問や答えをやめてみる。先のことだけを考えて、次に何をしようとしているのか、何がスプリントゴールの達成を妨げているのか、どのように改善できるのかに集中します。それにより、チームはポジティブな気持ちでスプリントゴールの達成に集中することができます。

個人の進捗の確認ではなく、全体進捗の確認となる議論をする

個々の更新ではなく、全体の作業の進捗状況について話し合う。そうすることにより、個人の報告ではなくなるため、1人が1回だけでなく、細かく複数回発言することにも繋がります。

デイリースクラムの流れと改善に向けて

同じ時間、同じ環境で開催します。これは事前にチームで合意しておきましょう。

タイマーを15 分にセットして、デイリースクラムの時間を厳守します。

3 つのデイリースクラムの質問から始めてみましょう。

スプリントレトロスペクティブ(振り返り)で、デイリースクラムを改善する方法について話し合います。

スプリントゴール達成に向けた進捗状況を確認するために、最も適した方法でアプローチを繰り返します。

デイリースクラムの具体例

以下は、デイリースクラムミーティングの基本的な進め方の一例です。

今回の例では、スクラムマスターがファシリテートしていますが、
最初は教えるという意味でスクラムマスター、そして慣れてくれば開発者が誰でもファシリテートできるという状態が望ましいです。

スクラムマスター

さて、始めましょう。誰が最初にやりたい?

開発者A

私から。昨日、私はログイン機能の開発を終え、テストする準備ができました。

スクラムマスター

素晴らしい!ありがとうございます。
誰か、作業を妨げている障害や依存関係がある人はいますか?

開発者B

はい、プロフィール編集機能の作業を続ける前に、ユーザープロフィール用のAPIエンドポイントを完成させる必要があります。

スクラムマスター

OK、開発チームをフォローアップするようにします。開発者Cさんはどうですか?

開発者C

ホームページのデザインはまだ途中ですが、今のところ障害はありません。

スクラムマスター

そうですか、ありがとうございます。今日の予定は?

開発者A

私はログイン機能をテストして、出てきたバグを修正する予定です。

開発者B

まだAPIエンドポイントが完了していないので、プロフィール表示機能に取り組むつもりです。

開発者C

私はホームページのデザインに引き続き取り組みます。

スクラムマスター

皆さん、ありがとうございます。今日中に何か問題や障害などがあれば、お互いに更新するようにしましょうね。

Joe Justice

昨日達成したこと、今日取り組むこと、そして進捗を妨げている障害に関しての 3 つのデイリースクラムの質問の例です。

デイリースクラムのアンチパターン

アンチパターン
  • 形だけの進捗共有の場になっている
  • 議論が発散し、15分では終わらず長引く
  • 1人の話が長く、誰か特定の人物のための会議になっている
  • デイリースクラムが形骸化している

上記がよくある悩みや、質問としてよくあるケースです。
次からはデイリースクラムのヒントをみていきましょう。

デイリースクラムに関するFAQ

デイリースクラムが長いと感じます。15分以内に保つ方法は?

スクラムマスター、またはファシリテーターは、15分間のタイマーが全員に見えるよう表示します。

デイリースクラムにて1 人が話しすぎる場合はどうすれば良いですか?

誰かが簡単な合図を出します。音を鳴らしてもいいですし、人形などを使って可愛く表現してもいいでしょう。これらのルールをあらかじめチームで合意しておけば、嫌な気分になることもありません。

デイリースクラムで発言するメンバーがいつも同じなのですが、どうすれば改善できますか?

ファシリテーターをローテーションして、全てのメンバーにファシリテーターを担う機会を提供してください。

デイリースクラムが長い!議論が発散し、15分では終わらず長引く場合の対処法は?

15分以内に解決することができない場合は、デイリースクラム以外で会議するようにします。そして議論すべき課題はパーキングロットに移しておきます。パーキングロットには、駐車場のように課題などを並べて表示し、必要な時に必要なメンバーが確認でき、議論することができます。

デイリースクラムの改善をするポイントは?

スプリントレトロスペクティブの際に、デイリースクラムについて振り返り、改善点がないか検討します。

デイリースクラムの開催は夕方?1日のどのタイミングがよいですか?

デイリースクラムは1日のどのタイミングで行うかの決まりはありません。朝会または夕会で行われるのが一般、朝会で実施している方が多いと思います。

教えてJoe!デイリースクラムは無くしてもいい?

いい質問ですね。私はチームがモブ(共同作業)をしていれば、必然的にデイリースクラムはなくなると思っています。
モブはチームで作業をすることを意味するので、改めて情報や課題を共有する場を設ける必要がないのです。チームがモブをしている、もしくは何らかの手段でチーム内の共有ができていればデイリースクラムを無くしても問題ありません。
しかしそうでない場合は、デイリースクラムを実施することをおすすめします。デイリースクラムは、スプリントゴールをチームで達成していくための重要なプロセスとなります。

※モブとは?
モブ(Mob)とは、チーム全員が同じことを同時に、同じ環境で、同じコンピューターで作業する方法です。
モブプログラミングを聞いたことがある方も多いかもしれませんが、モブを実践するチームは、ソフトウエア開発だけではなく、多くの場面で使用しています。
(2人で実施するペアから進化したのが、3-5人で実施するモブです。)

デイリースクラム まとめ

デイリースクラムは、チームが生産的かつ効果的にスプリントゴールを達成するために重要なスクラム開発のイベントのひとつです。

デイリースクラムはあくまで、開発者による開発者のためのミーティングです。
問題が発生した際に、ついネガティブな発言が多くなりがちですが、重要な事は
「次に何をしようとしているのか」
「何がスプリントゴールの達成を妨げているのか」
「どのようにすれば改善できるのか」

この様にゴールに向けた前向きな発言を心掛けることで、チームはポジティブな気持ちでスプリントゴールの達成に集中することができます。

ぜひ、改善を繰り返しながらみなさんのチームに最適なデイリースクラムのやり方を見つけてみてください!

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