アジャイル開発におけるレトロスペクティブとは?手法・やり方事例
アジャイル開発において、レトロスペクティブとは「振り返り」です。
スクラムチームがスプリントを繰り返し開発を進める中で、レトロスペクティブは重要な意味を持ちます。
もちろん、プロダクトの品質の意味でも重要ですが、レトロスペクティブはスクラムチームが成長する上でもとても大きな意味を持ちます。
スクラムチームが成長する為に心掛けて欲しいのが、レトロスペクティブの中では常にポジティブは発言する事です!
この記事の中で、代表的なレトロスペクティブの手法を紹介しますが、どの手法においてもレトロスペクティブはポジティブな場である事は共通して言えることです。
この記事では、レトロスペクティブが大切な理由と、おすすめの手法をいくつか紹介します。
レトロスペクティブの手法ややり方を覚えると同時に、レトロスペクティブの中でスクラムチームが成長できるという事も学んで欲しいです。
この記事でわかること
- レトロスペクティブとは?概要や目的が理解できる
- レトロスペクティブのやり方がわかる
- レトロスペクティブの手法
- リファインメントの失敗例や注意点が分かる
- リファインメントに関するJoeからのアドバイス
スプリント レトロスペクティブとは
レトロスペクティブとは、日本語で言えば「振り返り」です。
スプリントで、”何がうまくいったのか”、”何がうまくいかなかったのか”を振り返ります。
目的は、振り返りで生まれた会話や学習を基に、「改善」として次に取り入れることです。これにより、作業方法だけでなく品質も継続的に改善できます。
スプリント レトロスペクティブはなぜ必要なの?
一言で言えば、スプリントレトロスペクティブは、チームが継続的に改善できるようにするために必要です。
多くの場合、目の前のタスクをこなし、ただひたすら次のタスクへと移っていきます。レトロスペクティブは、自分たちの作業やプロセスを振り返ることで、チームの働き方を改善するのに役立ちます。
スプリント レトロスペクティブのメリットは?
レトロスペクティブでは、「プロセス」「技術」「チーム」について振り返ります。注意したい点はプロダクトについて確認や、振り返る場ではないということです。
「プロセス」「技術」「チーム」を継続して改善し続けることは、チーム力を高め、多くのメリットをもたらします。
コミュニケーションの促進、チーム力を高める
レトロスペクティブは誰もがアイデアを提供し、フラストレーションを発散し、意思決定に参加することができます。これにより、透明性とオープン性を高め、チーム内に信頼できる環境が生まれます。
チームの生産性の向上
プロセスや技術、チームの心理的安全性を見直し改善することは、生産性の向上に繋がります。
スプリント レトロスペクティブのやり方
レトロスペクティブの正しい唯一の手法はありません。
レトロスペクティブには多くの手法が存在します。
一般的によく使われるものから、ユニークなものまで本当に沢山あります。
重要なことは、チームメンバー全員が、成功を祝い、失敗を熟考するための機会にすることです。
どの手法を使っても、これが実現できればいいのです。
次からはおすすめの手法をいくつか紹介していきます。
スプリント レトロスペクティブの手法
一般的によく使われるものから、少しユニークなものまでピックアップしてやり方を説明しています。
どれを使ってみてもいいですし、時々手法を変えてみるのもおすすめです。
- KPTA
- Fun Done Learn
- 4L
- What Went Well
- Start Stop Continue
- Mad sad Glad
- スピードボート
- スターフィッシュ
- 3匹の子豚
- スピードカー
KPTA
KPTAフレームワークとは、「Keep(良かったこと・続けること)」「Problem(不満なこと・改善すべきこと)」「Try(試したいこと)」「Action(アクション)」の4つの観点からのフレームワークで考えるレトロスペクティブの手法です。
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、「Keep」と「Problem」を書いて表に表示します。チーム内で、「Keep」と「Problem」を共有します。
「Keep」「Problme」に対する改善案を「Try」に書いて表示します。「Keep」「Problem」とは関連しないが、新たにチャレンジしたいことも「Try」として書きます。
チーム内で、「Try」を共有します。
「Try」は改善案であり、挙げたことを全て行う必要はありません。選択した「Try」をアクションに落とし込み具体化します。これを「Action」に書いて表に表示します。
Fun Done Learn
Fun Done Learnとは、「Fun(楽しかったこと)」「Done(やったこと)」「Learn(学びを得たこと)」の3つの観点から考えるフレームワークを使うレトロスペクティブの手法です。レトロスペクティブの手法の中でもシンプルなフレームワークです。
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、「Fun」「Done」「Learn」を書いて表に表示します。どこか1つだけに該当するかもしれませんし、2つ、もしくは3つに該当する内容かもしれません。
チーム内で共有をして、次のスプリントではどの領域を改善したいか考えます。
4L
4Lとは、「Liked(好きだったこと)」「Learned(学んだこと)」「Lacked(欠けてたこと)」
「Longed(望んだこと)」の4つの観点から考えるフレームワークを使うレトロスペクティブの手法です。
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、「Liked」「Learned」「Lacked」「Longed」を書いて表に表示します。チーム内でシェアをします。
多くの場合は、次のスプリントで改善したいアイテムを投票して決めます。
What Went Well
What Went Welとは、「Went Well(うまくいったこと)」「 To Improve(改善すること)」「Action Items(アクションアイテム)」の3つの観点から考えるフレームワークを使うレトロスペクティブの手法です。
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、「Went Well」「 To Improve」を書いて表に表示します。
これはとても意図的なものです。「何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか」と言った方が簡単ですよね。
しかし「何がうまくいき、何を改善したいのか」という言い方をすると、ネガティブさや不満から、ポジティブで 建設的なフィードバックに焦点が移ります。
チーム内でシェアをして、「Went Well」「 To Improve」に対する次のスプリントでの「Action Items」を書き表示します。またこれらのアイテムを優先順位順に並べます。
Start Stop Continue
Start Stop Continueとは、「Start (始める)」「Stop(辞める)」「Continue(続ける)」の3つの観点から考えるフレームワークを使うレトロスペクティブの手法です。
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、「Start」「 Stop」「Continue」を書いて表に表示します。
チーム内でシェアをします。類似しているアイテムがある場合は、それらを 1 つにまとめます。
次のスプリントでの改善を決めるため、どのアイデアについて議論を進めるのか、どのアイデアは現段階では破棄をするのかを決定するために、チームは投票します。
シンプルになったボードを見て、チームは各カテゴリを議論します。 Start Stop Continue とは、プロセスのマイナス要素を無くして、プラス要素を強化することです。
Mad sad Glad
Mad Sad Gladとは、「Mad(怒ってる)」「 Sad(悲しい)」「 Glad(嬉しい)」の3つの観点から考えるフレームワークを使うレトロスペクティブの手法です。
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、「Mad」「 Sad」「 Glad」を書いて表に表示します。そして、チーム内で共有します。
議論するアイテムを絞るため、投票を行っていくつかのアイテムを選びます。そしてチームは、次のスプリントの改善アイテムについて議論し考えます。
スピードボート
スピードボート は、チームがスプリントについて振り返るための、楽しくインタラクティブなフレームワークです。このレトロスペクティブの手法は、ヨットが岸に向かうということに見立てて、自分の船 (チーム) が、目的地 (プロジェクトゴール) に到達することを視覚化するのに役立ちます。
ヨット: チーム自身
太陽:うまくいったこと、嬉しいこと
島または海岸: チームの最終的な目標またはビジョン
波しぶき(風または帆): チームが順調に進むのに役立っていること
アンカー: チームやプロジェクトの進行を妨げているもの、または遅らせているもの
岩: プロジェクトのリスクまたは潜在的なリスク
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、思いつくアイテムを書き出しイラストの該当箇所へ表示します。そしてチーム内で共有をします。
次のスプリントで改善するアイテムを決めるため、チームは投票をします。それらについて次のスプリントでどのような改善を行うのか議論します。
スターフィッシュ
スターフィッシュとは、ヒトデ ダイアグラムを使用して5つの観点から考えるフレームワークを使うレトロスペクティブの手法です。
- Keep doing (やり続ける):チームがうまくやっていて、その価値を認めていること
- Less of (減らす):現在行われているが、減らしていきたいこと
- More of (増やす):現在行われているが、さらに増やしたいこと
- Stop doing (辞める):価値がなく辞めたいこと
- Start doing (始める):新しいアイデアや、新たに始めたこと
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、思いつくアイテムを書き出しヒトデの該当箇所へ表示します。
各カテゴリについて、チームで議論をします。ネガティブなカテゴリについて話した後、何を始めるのか、最後はポジティブな雰囲気で終わらせてください。
3匹の子ぶた
童謡の3匹の子ぶたの 3 つの「家」タイプに見立てて、レトロスペクティブを行う楽しいフレームワークを使うレトロスペクティブの手法です。
わらの家:不安定でうまくいかないこと
木の家:部分的に堅牢性に欠けること(まだ改善の可能性がある)
レンガの家::チームにとってうまくいっていること
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、思いつくアイテムを書き出し3匹の子ぶたの家の該当箇所へ表示します。
チーム内で共有します。次のスプリントで改善するアイテムを決めるため、チームは投票をします。それらについて次のスプリントでどのような改善を行うのか議論します。
スピードカー
スピードカーは、チームをレーシングカーに例えて、チームを妨げているものと前進させているものについて視覚的に表現します。またゴールラインした場合のお祝い方法についても考えます。
パラシュート:チームを遅らせているもの
電気自動車:私たちを前進させる原動力
ストップサイン:何をやめる必要があるか
フィニッシュ ライン:何が私たちを動かしているのか、どのように祝うのか?
チームメンバーは各自、スプリントを振り返りながら、思いつくアイテムを書き出しイラストの該当箇所へ表示します。そしてチーム内で共有をします。
議論するアイテムを絞るため、投票を行っていくつかのアイテムを選びます。そしてチームは、次のスプリントの改善アイテムについて議論し考えます。
最後に改善ができた場合など、達成できたことをどのようにチームが祝うのかお祝いプランを考えます。
レトロスペクティブに関するFAQ|教えてジョー!
- レトロスペクティブで形骸化しがちです。どうすればいいですか?
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SMはファシリテーターでもあります。再度レトロスペクティブの目的をチームへ説明してください。また手法は沢山あるので、時にはやり方を変えながら、ゲーム感覚で楽しいレトロスペクティブになるよう心がけてみてください!
- レトロスペクティブには誰が参加すべきですか?
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チームメンバー全員が参加することが理想です。参加できないメンバーがいる場合は、「プロセス」「技術」「チーム」に最も関わる開発者を中心に開催することも可能です。しかし全員が参加できるよう、心理的安全性を高める活動も必要でしょう。
- レトロスペクティブの注意点をアドバイスしてください!
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ハーバード大学の研究によると、チームの幸福度を高めることはスピード改善に繋がるということが証明されています。私も実際にチームメンバーの幸福度が高まると、スピードアップするという経験を何度もしたことがあります。
心理的安全性はアジャイルを機能させる上で、非常に重要なことです。時にはチームメンバーのハピネスや、リフレッシュについて全員で考えてみてください。
レトロスペクティブ おすすめツール
いくつかの手法を紹介してきましたが、これらをオンラインで行える優れたツールがあります。
ここでは、35もの手法を簡単に使うことができます。
レトロスペクティブまとめ
いくつかの手法を紹介しましたが、見せ方が違うだけで、”何がうまくいったのか”、”何がうまくいかなかったのか”を振り返るという目的は、ほぼ同じでしたね。
レトロスペクティブは、常にポジティブな会話であることを忘れないでください。
つい”うまくいかなかったこと”に目が向きがちですが、チームメンバー全員が、成功を祝い、ハッピーを共有するという点も忘れないでください。時には「改善」は、ハッピーをどのように伸ばせるのか?という視点でもいいのですから。
ぜひ新しい手法も取り入れながら、ポジティブなレトロスペクティブをしてみてください。