アジャイルが創るワンチームの力|スパイスファクトリー株式会社
取締役COO 小島氏 & PMディビジョン 松岡氏 インタビュー
アジャイル開発の普及が進む中で、注目を集めるスパイスファクトリー株式会社。その背景には、アジャイルの本質を理解し、実践に活かしている独自の文化があります。今回は、スパイスファクトリー株式会社の取締役COOである小島氏と、PM Divisionの松岡氏に、同社のアジャイル導入の経緯や実践事例、さらに未来への展望についてお話を伺いました。
自己紹介
小島氏:アジャイルの未来を切り拓くリーダー
スパイスファクトリーで取締役COOを務めています。2021年11月にスパイスファクトリーにプロジェクトマネージャーとして参画し、2022年取締役COOに就任しました。アジャイル開発に初めて触れたのは、ABIでの研修がきっかけです。アジャイルの実践を重ねる中で、その価値と効果を日々実感しています。
小島氏:アジャイルの未来を切り拓くリーダー
スパイスファクトリーで取締役COOを務めています。2021年11月にスパイスファクトリーにプロジェクトマネージャーとして参画し、2022年取締役COOに就任しました。アジャイル開発に初めて触れたのは、ABIでの研修がきっかけです。アジャイルの実践を重ねる中で、その価値と効果を日々実感しています。
松岡氏:現場を支えるアジャイル実践者
PMディビジョンでPMやディレクター業務を担当しています。アジャイル開発のプロジェクトに関わると同時に、チームメンバーの育成にも携わっています。現在、約7~8割の案件がアジャイルの手法を取り入れて進行しており、日々クライアントとともに試行錯誤しています。私もABIのスクラム研修を受け、スクラムの実践的なやり方だけでなく、さまざまな業界の参加者との交流から幅広い視点を得ることができました。
松岡氏:現場を支えるアジャイル実践者
PMディビジョンでPMやディレクター業務を担当しています。アジャイル開発のプロジェクトに関わると同時に、チームメンバーの育成にも携わっています。現在、約7~8割の案件がアジャイルの手法を取り入れて進行しており、日々クライアントとともに試行錯誤しています。私もABIのスクラム研修を受け、スクラムの実践的なやり方だけでなく、さまざまな業界の参加者との交流から幅広い視点を得ることができました。
スパイスファクトリーとアジャイルの出会い
創業当初からのアジャイル志向
スパイスファクトリーがアジャイルを導入した背景には、「変化に柔軟に対応し、価値を最大化する」文化を創りたいという創業時からの理念がありました。
小島氏:
「スパイスファクトリーは2016年の創業当初から、アジャイル開発やスクラム開発の手法をいち早く取り入れてきました。その背景には、ウォーターフォール型の開発手法に限界を感じていたことがあります。ウォーターフォールでは、最初に決めた仕様が最後まで変わらないという前提ですが、実際には途中で変更が必要になることが多く、その都度大きな手間が発生します。私自身も過去の経験で、最初に決めたことがそのまま最後まで進むことはほとんどないと実感していました。こうした課題を解決するために選んだのが、柔軟性があり反復的な改善を取り入れるスクラム開発だったのです。」またこの考えを支えるのは、社員やクライアントが同じ目標を共有し、適応力を持って進む「ワンチーム」文化でした。
社内で育まれるアジャイル文化
月一回のミートアップで共有されるコアバリュー
スパイスファクトリーのコアバリューは、スクラムの価値観を反映して設計されています。これを社員全員に浸透させるため、同社では月一回の「ミートアップ」を実施しています。このオンラインイベントでは、社員がプロジェクトで得た成功事例や学びを共有し、コアバリューに基づいたライトニングトークが行われます。
小島氏:
「社員が日々の業務の中でスクラムやアジャイルのマインドに触れる機会を作ることが重要です。例えば、プロジェクトで得た成功体験や課題解決の取り組みを共有することで、自然とアジャイル文化が育まれていきます。このミートアップには、社員だけでなくパートナー企業の方々にもご参加いただいており、共に学び合う場となっています。」
日常業務に溶け込むアジャイルマインド
さらに、日常的にアジャイルマインドを意識させる仕組みとして、スラックのスタンプ機能を活用しています。「確約」「集中」「公開」「尊敬」「勇気」といったスクラムの5つの価値基準を表すスタンプを用意し、社員が互いに励まし合いながらアジャイル文化を共有しています。
小島氏:
「小さな取り組みですが、社員同士がアジャイルを意識し、楽しみながら働ける環境を整えています。」
クライアントとのワンチーム文化
スパイスファクトリーでは、クライアントを「発注者」ではなく「プロジェクトパートナー」として迎え入れることを重要視しています。
小島氏:
「弊社では、受発注の枠を超え、パートナーをチームの一員として捉え、フラットな立場で協力し合いながら課題を解決することを大切にしています。
具体的な取り組みとしては、クライアントと共にインセプションデッキを作成し、プロジェクトの目的やゴール、優先順位を明確にします。また、キックオフではアイスブレイクとしてゲーム形式の自己紹介を取り入れ、お互いの距離を縮める工夫をしています。さらに、クライアントにもアジャイルの価値観を実感していただけるよう、プロジェクト初期にはワークショップを実施し、アジャイル手法の基本を一緒に学んでいます。
これらのアプローチを通じて、プロジェクト開始時から「一緒にやっていこう」という共通意識を醸成することができています。
こうした取り組みによって、クライアントは「受発注関係を超えたワンチーム」としてプロジェクトに関与するようになり、結果的により良い成果物を生み出すことができています。」
松岡氏の成功体験と課題
成功事例:理想的なワンチームの実現
松岡氏が特に印象深いと語る成功事例は、あるクライアントと築いた「理想的なワンチーム文化」です。このプロジェクトでは、クライアント側のプロダクトオーナーが積極的に関与しており、チーム全体が一丸となってスムーズに進行しました。
松岡氏:
「POがやりたいことを明確に持っていて、スクラムの基本に忠実な進め方ができました。全員が自分の役割を理解し、チーム全体で目標に向かって進むことができたため、非常に理想的な形でプロジェクトが進行しました。またクライアントの積極的な関与もプロジェクトの成功に不可欠でした。」
課題:役割認識の欠如が生む混乱
一方で、プロジェクト初期における役割の認識不足が混乱を招いた経験もあると語ります。
松岡氏:
「プロジェクトが始まった直後、メンバー全員が自分の役割を理解できていないまま進行してしまい、チームが混乱することがありました。このような状況では、早い段階で修正しないと、大きなトラブルを引き起こす可能性があります。
この課題に対処するため、スパイスファクトリーでは、プロジェクト開始時に必ず社内外でキックオフミーティングを実施し、役割や目標を明確化する取り組みを行っています。」
行政とのアジャイルプロジェクト
東京都との案件では、行政特有のウォーターフォール文化を打破し、アジャイル開発を導入する成功例を作りました。まず、職員に対してワークショップ形式の研修を実施し、アジャイルマインドの基礎を共有。その後、プロジェクトをアジャイルで進行。合わせてアジャイル型開発プレイブックを作成しました。
小島氏:
「行政では、限られた予算計画の中で、住民に役立つサービスをどれだけ早く提供できるかが課題でした。職員の方々は住民第一という視点を大切にしながら、自分たちの業務を改善する意欲も高く持っていたため、アジャイル導入がスムーズに進みました。
さらに、プレイブックは初めてアジャイルを学ぶ人でも理解しやすいよう工夫されています。ロールプレイング形式やゲーム感覚を取り入れた内容で、職員を含めたチーム全員がアイデアを出し合いながら設計しました。
また東京都は、この取り組みを他部署にも拡大する計画があり、ロードマップが策定されています。地方自治体や他の行政機関への展開も期待されています。」
海外拠点でのアジャイル実践
スパイスファクトリーはフィリピンに拠点を構え、アジャイル手法での連携を日々行っています。デイリースクラムは英語で実施され、進捗の確認や改善提案をスムーズに進めています。
小島氏:
「フィリピンのメンバーとのリレーションは、アジャイルのルールが明確であることで、仕事の進め方がスムーズです。ウォーターフォール型思考が染みついている影響が少ない海外メンバーは、初めからスムーズにアジャイルを実践できる場合が多い傾向にあると感じます」
クライアントに寄り添うアプローチ
PMディビジョンで多くのプロジェクトをリードしてきた松岡氏は、アジャイル開発が持つ「柔軟性」と「クライアントとの信頼関係構築」の重要性を実感しています。
松岡氏:
「私たちのクライアントの多くはアジャイルに関心を持っていますが、中にはウォーターフォール的な進め方を希望される方もいらっしゃいます。そのため、まずはクライアントのニーズに寄り添い、アジャイルに対する安心感を持っていただくことを心がけています。
場合によっては、プロジェクトの目標やニーズに応じて、アジャイルとウォーターフォールを組み合わせたハイブリッド型で進めることもあります。この方法を選択する際には、アジャイルの持つ利点を損なわないようバランスを取ることが特に重要です。」
ハイブリッド型アジャイルの挑戦
松岡氏:
「クライアントがウォーターフォール的な進行を希望される場合でも、デイリースクラムや振り返りなどアジャイルの要素を一部取り入れています。クライアントにとっての安心感を維持しながら、アジャイルの持つ柔軟性や対応力を発揮できるよう工夫しています。
一方で、こうしたハイブリッド型には特有の課題もあります。ウォーターフォールとアジャイルの双方の利点を最大限に活かすためには、適切なバランスを保つ必要があります。このバランスを取る過程で、混乱を防ぎながらプロジェクトを進めるのは容易ではありませんが、ここに私たちの工夫や取り組みの重要性があると感じています。」
松岡氏:
「クライアントにとって安心感を与えるためには、透明性と頻繁なコミュニケーションが欠かせません。また、プロジェクトメンバー全員が役割をしっかり理解し、実行することが成功の鍵です。」
アジャイルの教育と育成
PMディビジョンでは、全メンバーが認定スクラムマスター資格を取得しています。この取り組みは、全員がアジャイルの基本を理解し、現場での応用力を高めるためです。
松岡氏:
「特に未経験者には、ワークショップ形式の研修が有効です。実際のプロジェクトに参加しながら、半年もすればアジャイルの感覚を掴めるメンバーが多いです。」
ABIの研修から得た学び
― 小島さん、松岡さん、お二人が受講されたABIの研修について教えてください
小島氏:
私が初めてスクラムに触れたのは、まさにABIの研修でした。2022年7月頃に受講し、スクラムの基本的な考え方や実践方法を深く学びました。当時、スクラムやアジャイルについて知識として知っているだけという状態だった私にとって、研修はとても新鮮で、チームで協力しながら問題を解決するプロセスに感動しました。「実際にやってみるとこうなるんだ」という体験を通じて、ただの理論ではない実践的な手法だと実感しました。
松岡氏:
特に印象的だったのはワークショップ形式での学びでした。本や理論だけでは得られない「体感的な理解」を深めることができたのが大きな収穫です。さらに、多様な業種の方々が参加されていたことで、「アジャイルはソフトウェア開発に限らない」という新たな気づきを得ることができました。別業界の事例を聞く中で、「自分たちのプロジェクトにもこう応用できそうだ」といった新しいアイデアも浮かびました。このように、幅広い視点を得られる場が提供されたことが、研修での一番の学びでした。
― 研修を受けたことでどのような変化がありましたか?
松岡氏:
研修を受ける前は、「モブプログラミング」という言葉自体を知らず、その意味も全く分かりませんでした。しかし、研修で実際にそのプロセスを体験したり、映像で事例を見たりすることで、「こういうメリットがあるのか」と理解を深めることができました。特に、エンジニアの皆さんがその場で相談しながら進めることでレスポンスが早くなる点が非常に魅力的だと感じました。現在では、その考え方を他のチームメンバーに共有する機会が増え、社内でアジャイルを進めるうえでの共通認識として広がっています。
― これから研修を受けるか悩んでいる方へメッセージをお願いします
松岡氏:
「案ずるより産むが易し」という言葉がありますが、まさにスクラムは実践することで初めて理解できると思います。私は現在、未経験メンバーがスクラム開発に慣れるためのメンターとして活動していますが、研修に参加して「一発で雰囲気がつかめた」という声を多く聞きます。
研修は、理想的な軸を自分の中に持つための投資だと考えるといいと思います。一度その軸ができれば、現場でも自信を持って取り組むことができるはずです。悩んでいる方には、ぜひ一歩踏み出してほしいですね。
未来への展望
小島氏のビジョン
小島氏:
「日本企業の俊敏性を高めるために、アジャイルマインドを広めることが必要です。スパイスファクトリーとして、社会全体に変化をもたらすような存在になりたいと思っています。」
松岡氏のビジョン
松岡氏:
「もちろん正しいアジャイルの実践は重要ですが、柔軟性を持ちクライアントに寄り添ったスパイスファクトリー流のハイブリッド型アジャイルを確立し、クライアントが安心して取り組める環境を作りたいと思っています。また、スクラムの楽しさを実感できるプロジェクト運営を目指していきたいと個人的に強く思います。」
まとめ
スパイスファクトリーのアジャイル成功のポイントは、柔軟なクライアント対応、教育、そして体験型の研修です。これらを実行することで、アジャイル開発は単なる手法にとどまらず、企業文化として根付き、クライアントとの強力な信頼関係を築くことができます。
このインタビューを通じて、スパイスファクトリーの実践例が新たな気づきや挑戦へのヒントを提供できれば幸いです。