インタビュー|株式会社NTTドコモ 生巣様
自己紹介と背景について
まず、自己紹介をお願い致します。
【生巣】NTTドコモの生巣と申します。d払いやdポイントなど皆様の生活を支える各種プロダクト開発を担う部署の横断的な人材育成担当として、アジャイル推進と開発エンジニアの育成を担っています。
アジャイル人材育成について
人材育成について、どのような取り組みをしていますか?
【生巣】お客様により良い価値を届けていくために、高付加価値に高アジリティに高信頼性のあるプロダクトを提供できるチームの育成を目指しています。その実現のため、アジャイルを含むいくつかの重点テーマに対して、新規着任者向け研修やコミュニティのような広く浸透させるための施策から、実際のプロジェクトに伴走してパイロットチームを作っていくような施策を行っています。これに合わせてドコモグループの行動原則を体現する文化を醸成するための施策も行っています。
具体的には、どのような取り組みをされていますか?
広く浸透させるための施策とパイロットチームを育成する施策の両面からアプローチしています。例えば、新入社員や着任者向けにはアジャイル基礎研修や、ドコモグループ内企業と協力したスクラム体験研修を実施しています。特に、ビジネスサイドを含めた全社員を対象にした必須研修として、アジャイルの必要性やポイントを伝える研修を提供しています。また、既存社員向けには、実プロジェクトに役立つTipsを盛り込んだeラーニングや、組織長が積極的に発信するアジャイルプレイブックを提供しています。
さらに、マネージャーや経営層向けにも、ボトムアップと並行してトップダウンのアプローチを進めています。社外のパートナーによる1on1を通じて、仮説検証型ビジネスを正しいアジャイル手法で浸透させる施策を展開しています。
リーダーシップやマネジメント層はアジャイルに対して、理解がありますか?
【生巣】カンパニー全体という視点では、コンシューマーサービスカンパニーでPurpose&3Valuesを掲げており組織としてアジャイルに通ずるマインドを目指していく方向性が打ち出され、各所で目にする機会があるため、各組織に浸透してきていると感じています。
Purpose
「つなぐ。育む。明日のあたりまえになるまで。」
3Values
- 「より良い提供価値の追求に終わりはない。」
- 「構想は大きく、仕掛けは速く。」
- 「社会の成長は自らの成長からはじまる。」
Purpose&3Value参考リンク
Purpose&3Valuesは、すごくアジャイルに重なる部分だと感じますし、もっと言えばアジャイルが実現したいことそのものだと思います。
実際のプロジェクトでパートナー企業と協力する際、役割分担はどのようにされていますか?
【生巣】社員数に限りがあるため、多くのプロダクトでは開発部分はパートナー企業と協力しながら進めています。担当社員はプロダクトオーナー相当を担うこともあります。優先順位の最終決定までは出来ないこともあるので、本来のプロダクトオーナーとまではいきませんが相当の業務を行うことは多いです。
また、開発メンバに近いほうがスムーズであることからスクラムマスターはパートナー企業側で出すこともありますが、ビジネスユニット含めた課題やチームを跨ぐ課題などは社員のほうが動きやすいため、スクラムマスターというロールを担っていなくても同等の動きを実施するような機会が社員にはあります。
POやSMは、チームのマネージャーやリーダーが担う役割だと思われがちです。
御社ではチームメンバーがそれらの役割を担っているという環境は、理想的だと思います。そうすることで、誰かの指示に従って動くのではなく、自分たちで考えて開発を進めているという前向きな気持ちが生まれ、より自律的に行動できるのではないかと感じました。
アジャイル導入の状況と効果
多くのメンバーの方に、弊社研修をご受講いただきありがとうございます。
積極的にアジャイルを導入されているのではないかと思いますが、生巣さんが所属する部署のアジャイル導入状況について教えてください。
【生巣】体感ではありますが、周囲と会話しているとだいぶ広がってきていると感じています。
研修で御社のメンバーを拝見した際、積極的で心理的安全性が高い方が多く、非常に良い企業だという印象を受けました。アジャイル導入後、チームのモチベーションにどのような変化があったか教えていただけますか?
【生巣】ありがとうございます。自担当は非開発組織ですが業務のやり方にスクラムを取り入れています。そのかいあってか、ふりかえりやそれ以外の時間でも改善していこうという意識が強く持てている印象です。
さらに組織文化としても、ドコモグループの行動原則というものがあり、その行動原則を元に具体ケースのディスカッションを職場で定期的に実施したりしていることも要因の一つかもしれません。
参考:ドコモグループ行動原則とは、「問い続けよう。お客さまと、社会の未来のために。」「踏み出そう。あなたの一歩を、変化の起点に。」「かけ合わせよう。あなたの個性を、みんなのチカラに。」の3つを指しています。
ドコモグループ行動原則参考リンク
行動原則について話合うのは興味深いですね。ディスカッションすることによって、形骸化されずに実際に行動に落とし込めるのかと思いました。
コミュニケーションの促進や、メンバー間のばらつきを無くす為の取り組みとしては何か行なっていることはありますか?
【生巣】プレイブックのようなドキュメントでの形式知化も取り組んでいますが、身近なチームでは、ジョーさんの研修でもおなじみのモブで業務を行うことでスキルトランスファーを兼ねて行っています。開発業務以外の資料作成等でもモブは有効と感じています。
また、アジャイルはコミュニケーションが大切となる手法だと捉えており、ビジネス部門も開発部門も関係なくチーム全員がお互いに相手を理解しようと歩み寄っていく姿勢が大切だと感じています。
例えば、開発サイドから情報をダッシュボード化するだけでも、ビジネスと開発が近づき信頼感が生まれ認識も合ってくることが期待できると考えています。
結局どんな手法や、ツールであったとしてもコミュニケーションを築いて信頼関係を築くということは、絶対に大切ですね。
研修受講について
生巣さんは、最上位資格CSP-SMも取得していただいています。また御社の多くのメンバーもCSM、CSPOの基礎資格以外にもアドバンスドやプロフェッショナルなど、上級資格をとっていただいています。
資格取得を推奨している背景などはあるのでしょうか?
【生巣】以前、アジャイル開発体制を拡大するという目標が掲げられていたこともあり、人材育成の立場からすると資格取得は対外的にわかりやすいことから一つの手段として取り入れていました。ただし、実際の受講者自体はプロダクトを良くしていきたいという想いから受講しているケースがほとんどと思います。また特に上級資格はさらにプロダクトや組織を良くするために悩んでいるメンバーが取得していると感じています。
ABIの研修を受講する決め手は何でしたか?
【生巣】本格的に依頼をさせて頂いたきっかけの一つは他社と比較したコストメリットです。たまたまABI社で研修受講したことはあったので、研修内容自体にも安心感があったことがもう一つの理由です。
ABIの研修を受講した感想を率直に教えてください。
【生巣】ジョーさんの人柄もあると思いますが、他の研修と比較しても、全体的にかなりポジティブかつ受講者をよく褒めてくれる印象があるので楽しかったという印象が強いです。またmiroを活用しており楽しくステップアップできる点もとても好印象でした。通訳が入りますが交互にしゃべっていただけるため聞きやすく理解しやすいと感じました。
受講後、何が一番変わりましたか?
【生巣】実際のアジャイル開発プロジェクトのメンバーも受講していますが「本来のアジャイル」を理解した上で、現在発生している状況に適応して課題に対処していこうという考えを持っているように感じます。また、人材育成の観点では研修提供の際にmiroを活用する点など研修自体の提供の仕方の良いところを参考にさせていただいています。
近年は、開発以外の一般企業の受講も増えていますが、アジャイルは決して開発業務の為のツールではなく、一般企業に浸透することで業務効率の向上など多くの意義があると考えています。その点について、アジャイル有識者としてどのように思いますか?
【生巣】現在の不確実性の高い世の中では、検査と適応を行うアジャイルは非常に強力な武器だと考えています。開発だけのものと思われがちですが、そもそも原則としてビジネス側も一体となって一緒に行うものと定義されていますし、非開発領域であったとしても概念としてもっと理解され少しずつ要素を取り入れるなど広がっていくことを期待しています。
未来への展望について
今後のアジャイル推進の計画や目標を教えてください。
【生巣】 お客様により良い価値を届け続けられるようなプロダクト開発チームを育成していきたいため、基礎となる文化やマインド面に加え、必要となる専門性スキルを広く浸透させるための施策と、具体プロジェクト伴走支援による個別チーム強化施策を両面で引き続き行っていく予定です。
最後に、アジャイル導入を考えている他の企業に対して、アドバイスをお願いします。
【生巣】「現場メンバーそれぞれが自分事として取り組み、チームが自己組織化していくこと」が何より大事だと思います。「なぜアジャイルにするのか」を「誰から言われているから」ではなく、各自が意義を腹落ちした状態まで持っていかないと頓挫してしまいます。また、透明性をあげてその変化の成果をビジネス側やトップが気づき、自分から巻き込まれにくるように仕向けることも重要だと考えています。
そして最初はファーストペンギンになる人が小さく始めることがほとんどだと思います。ぜひ、その人の活動を頭ごなしに否定するのではなく、まずは理解し認めて支援、賞賛してあげてほしいです。また開発していなくてもアジャイルの考え方は取り入れることができるので日々の業務や生活の中でも少しずつ試してみてください。
ぜひ、マネージャーや経営層の方々に覚えておいてほしいところです。そして本当に短かな環境でアジャイルを取り入れることは可能だと思うので、日々の業務や生活の中で試してみるというのは、改めて大切だなと思いました。
また自分事として捉えることで、そもそも仕事が楽しくなるのかなと思います。それが御社メンバーのあの前向きな空気感を作り出しているのかなと思いました。A B Iとしては、「なぜアジャイルにするのか」を腹落ちするような納得感を持って取り組めるよう試行錯誤していきたいなと思います!
今回は貴重なお話をお伺いさせていただき、本当にありがとうございました。