インタビュー|旭化成株式会社 西野大介様

目次

自己紹介とこれまでの背景

まず、自己紹介をお願い致します。

【西野】西野大介と申します。私は旭化成株式会社のデジタル共創本部、DX経営推進センターに所属しており、7月からデジタルタレント戦略部で企画推進グループのグループ長を務めています。主に、デジタルイノベーション、特にアジャイルに特化した高度専門職を担当しています。旭化成には2023年1月に入社しました。

経歴としては、旭化成株式会社に入社後、事業推進部署で約1年半、新規事業の立ち上げや既存業務の改善に携わりました。プロジェクトの推進だけでなく、管理職としてのバックアップや、アジャイルの標準化を進め、組織全体への浸透にも取り組みました。また、部門を超えた交流を促進するコミュニティの設計・運営など、横断的な活動にも積極的に関わっています。

旭化成に入社される前はどんなお仕事をされていたのでしょうか?アジャイルに関連する業務をされていたのでしょうか?

【西野】その前は、大手損害保険会社のデジタル組織に所属し、アジャイルの推進や新規事業開発に携わっていました。また、全社的な人材育成にも取り組んでおり、組織全体でのデジタルスキル向上に貢献していました。

ありがとうございます。そのご経験を活かしながら、現在の部署でもご活躍されているかと思いますが、今の部署ではどのような取り組みを進めていらっしゃるのでしょうか?

【西野】現在所属しているデジタル戦略部では、オープンバッジの推進や、全社的なデジタル人材のスキルやロール定義の設計に取り組んでいます。私はその全般的な活動に携わりながら、特にアジャイルに関するコンテンツ制作や育成資材の作成、研修の実施を担当しています。また、全社的な人材育成をさらに強化するため、組織全体の活動計画の立案にも力を入れています。

ありがとうございます。つまり、DX人材を育成する中で、アジャイルが重要な要素の一つとなっていて、西野さんはそのアジャイルの部分を主に担当されているということですね?

【西野】そうです。

個人としてのアジャイルの経験は?

西野さん個人として、アジャイルのご経験はどのくらいになりますか?

【西野】本格的に始めたのは2019年頃です。

ご入社された時点で、西野さんは既にアジャイルの経験があって、入社後すぐにアジャイルに取り組まれたということでしょうか?

【西野】そうですね。入社後、アジャイル開発グループという部署に所属しましたが、そこではすでにアジャイルを取り入れた内製開発が行われていました。ただ、当時の組織はまだ大規模ではなく、各メンバーが自分の知見を活かしながら、手探りでプロジェクトを進めている部分も多かったです。そこで、私はアジャイルを組織として仕組み化し、さらに推進するための取り組みを進めていました。

具体的にはどのような取り組みをされていますか?

【西野】一つの大きな取り組みがアジャイルを習得できるオープンバッジの推進です。オープンバッジは、デジタル上でスキルや知識を証明でき、取得したバッジをオンラインで簡単に共有できる仕組みです。これにより、社内外で個人の能力を可視化し、キャリア形成にも役立つ点が大きな魅力です。私が入社した際には、既にアジャイルのオープンバッジが存在していましたが、その運用を引き継いでから、コンテンツのブラッシュアップや新しい研修の作成、既存研修の改善を行っています。さらに、より効果的に活用できるよう仕組みの改善にも積極的に取り組んでいます。

【西野】また、社内でのアジャイルの普及にも積極的に取り組んでいます。様々な部署を訪問し、アジャイルの価値を伝えることで、社員の理解を深める活動を行っています。特に、オープンバッジの価値を広めることにも注力しており、研修の受講を促進するための働きかけも行っています。加えて、実務に参画して直接的にアジャイルを導入・推進する活動も並行して進めています。これらにより、実務と育成を融合させ、研修を通じてスキルアップを図るだけでなく、実際のプロジェクトにおいてもアジャイルを浸透させています。このように、研修での学びを現場に活かし、組織全体でのアジャイル文化の推進を図っています。

オープンバッジ研修の取り組み

オープンバッジの詳細をお聞きしても良いでしょうか?

【西野】オープンバッジ研修はレベル1からレベル5まであり、段階ごとに内容が分かれています。アジャイルに関しては、レベル3から基礎的な内容を学べるようになっています。レベル1の段階では、当社独自のメソッドである旭化成Garageの概要を、デザイン思考とアジャイルを組み合わせた形で学ぶ程度にとどめています。レベル3では、基本的に座学形式で学習が進められ、動画やスライドを活用して理解を深める内容となっています。現在はこの研修のリニューアルにも取り組んでおり、より実践的で効果的な学びを提供できるよう改善を進めています。

何日くらいで完了するボリューム感なのでしょうか?

【西野】このコンテンツは、集中して学べば1日から2日で完了する設計になっており、アジャイルに関わる人だけでなく、その周辺の人々にも利用できるようになっています。内容は詰め込みすぎず、基本をしっかり学ぶことを目的としています。レベル4に進むと、基礎的な学びと実務に分かれ、外部研修を通じて、CSM(認定スクラムマスター)やCSPO(認定スクラムプロダクトオーナー)の資格取得及び実務での活用に相当する経験の保有が要件となっています。このように、理論と実務を段階的に深めながら学ぶ構成になっています。

このような仕組みが社内で定着しているのは本当に素晴らしいですね。社内での普及については、どのように進めていらっしゃるのでしょうか?

【西野】そうですね、普及のためにさまざまな部署を回り、積極的に活動しています。例えば、アジャイルの価値をわかりやすく伝えるための資料を作成し、チームの人脈を活用して各部署に個別アプローチを行っています。また、全社的なアプローチとしては、社内掲示板やコミュニケーションツールを活用し、広報部門とも連携しながらアジャイルの魅力を広めています。こうした多方面からの取り組みで、より多くの社員にアジャイルを知ってもらい、活用してもらえるよう努めています。

オープンバッジの社内進捗

オープンバッジ研修は、どのくらい社内に浸透してきているのでしょうか?現在の進捗を教えてください。

【西野】全社的に一気に浸透させるのはなかなか難しいですが、4月からさらに力を入れて進めています。具体的な数値は公開していませんが、オープンバッジのレベル4にエントリーした人は、以前と比べて加速度的に増加しています。システム開発系の担当者に限らず、事業部門やバックオフィス部門など、さまざまな分野の人たちが参加しており、全社的にアジャイルが浸透し始めているのを実感しています。

ハードウェア分野でのアジャイル導入の進捗

アジャイルは幅広い業界で導入されるようになっていますが、ハードウェアの分野でも進んでいるのでしょうか?

【西野】全社での成功事例はいくつも出てきていますが、やはりハードウェアの分野ではソフトウェア開発と比べてトライアルアンドエラーが難しい部分が多いです。例えば、発注してから何ヶ月もかかることや、コスト面での物理的な制約があるため、試行錯誤しながら進めている状況です。ハードウェア特有の課題に対応しながら、少しずつアジャイルの手法を適用できるよう取り組んでいます。

ただし、工場の一部では既にアジャイルを取り入れて成果を上げている例もありますし、私自身の担当領域でも工場の担当者と相談しながら、どのような形でアジャイルを適用できるか模索しているところです。ハードウェア特有の制約がある中で、アジャイルの考え方をどのように活用できるか、実際の現場で実験しながら進めるべく活動しています。

工場での成功事例があるんですね。

【西野】そうです。工場のハードウェアそのものにアジャイルを適用するだけでなく、ソフトウェアや働き方に関連する部分にもアジャイル手法を取り入れています。働き方に関しては、私が工場の方々と会話する際にも、トヨタ生産方式などの例を引き合いに出しながら、アジャイルを生産性向上の仕組みとして提案しています。このように、現場に通じやすい言葉や具体例を工夫して使うことで、価値を理解してもらいやすくしています。

アジャイルを導入しましょうと言っても、工場などこれまでのやり方を長年続けてきた現場では、抵抗がある場合も多いですよね。

【西野】そうですね。ですが、生産性向上につながる話であれば、相手も前向きに受け入れてくれることが多いです。やはり、相手もプロフェッショナルなので、現場に合ったやり方を相談しながら提案すると、スムーズに進められています。

相手へのリスペクトを大切に、相手に合った形でご提案されていらっしゃるのですね。

【西野】アジャイル自体が元々トヨタ生産方式に影響を受けている部分もあり、私たちもその学びを活かしつつ、相手に合った形で導入を進めています。これにより、現場の状況に適応しながら、より生産性の高い働き方が実現できるようになると考えています。

他業種へのアジャイル活用と進捗

西野さんのバックグラウンドはソフトウェア開発ですか?

【西野】そうです。元々はソフトウェアエンジニアとして働いており、前職の損害保険会社に入社する前は、金融系のSIerで大手銀行や保険のシステム開発に携わっていました。

ソフトウェアだけでなく、ハードウェアや他の分野にも広げていこうと考えているのですね。

【西野】そうです。例えば、営業やマーケティングの分野でもアジャイルを活用できると考えています。現在はオープンバッジの受講者の多くがソフトウェア開発の方ですが、事業部門やバックオフィス部門の参加者も増えてきており、今後さらに広い範囲でアジャイルを活用していきたいと考えています。

他の業種や部門でのアジャイルの進捗や反応はいかがですか?

【西野】非常に好意的に受け入れてくれる方も多く、説明会にも多くの方が参加してくれています。また、デジタル開発に直接関わっていない方からも『とても魅力的なので、ぜひ受講したい』という声をいただいています。こうした反応を見ると、アジャイルの価値が広く理解され始めていると感じます。

ABIのクラスの率直な感想と受講後の変化

現在、旭化成グループの方々にABIのアジャイル研修へ多くのお申し込みをいただいておりますが、研修を選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか?

【西野】最初にCSMを受講したときは、オンラインで短期間で終わる手軽さが決め手でした。しかし、実際に受講してみて内容が非常に良かったので驚きました。これは素晴らしい研修だと感じたので、周りにも積極的におすすめしましたし、さらに一緒に仕事をしていきたいと思いました。

ありがとうございます。実際に受講して、どのような点が良かったと感じたのか、また共感した部分について、もう少し詳しく教えていただけますか?

【西野】ABIのクラスは非常に楽しく、和やかな雰囲気が印象的でした。普通なら、資格が取れればそれでいいや、という感じになりがちですが、ここでは授業そのものが楽しく、学びも非常に深かったです。受講者同士の積極的な参加意欲も高く、一体感がありました。そういった雰囲気がとても良かったです。

【西野】また、原則にとどまらず、AIをアジャイルの進行で活用する具体的な方法まで扱ってくれたので、本当に実践的で楽しい研修でした。こうした最新の技術や実際の現場で使える手法を学べたことが、特に魅力的でした。

楽しさを感じてもらえたことが一番嬉しいですね。やはり、どうすれば受講生が集中力を保ちながら、楽しんでもらえるかを常に考えています。そういった部分を楽しいと感じてもらえたのは、本当に嬉しいですし、受講生の皆さんに感謝しています。

【西野】そうですね、受講生全体が楽しく学べると、自然と雰囲気も良くなります。皆さんが楽しそうに取り組んでいると、それが他の受講生にも伝わり、全体の学びの質が向上します。楽しい雰囲気がチーム全体に広がることで、積極的な参加や理解が深まり、結果として研修の効果も高まります。

受講を通じて得た気づきや、新しい視点があればお聞かせください。

【西野】アジャイルは「楽しくなければ成功しない」ということに改めて気付きました。実際、アジャイルの運用が難しく、失敗することもありますよね。私が過去に初めてチームに合流した際、チーム内がピリピリしていたり、誰かを責めるような雰囲気になってしまっていたことがありました。

そのような経験もあり、担当プロジェクトにおいては特にチームの雰囲気作りに力を入れ、チームが楽しく進められる環境を整えることを重視しています。やはり、アジャイルの成功には「楽しさ」が重要だと感じています。

また一般の認定研修には、厳格なルールを重視するものも見受けられますが、この研修ではエクストリームプログラミングやMobAIといった多様なプラクティスを学べたことが大きなポイントでした。その結果、実務に戻ったときには、これまで以上に多様なプラクティスを積極的に取り入れようという意識が高まりました。幅広い知識を得られたことで、現場での柔軟な対応が可能になり、よりスムーズに業務を進められるようになったと感じています。

研修を通じて強まったのは、自分たちに最適な方法をいろいろ試しながら進めていくという姿勢です。多様なプラクティスを学んだことで、どれがチームやプロジェクトに最も適しているのかを試行錯誤しながら模索するようになりました。この姿勢こそが、チーム全体の成長にもつながっていると実感しています。

私たちABIでも教える際に特に重視しているのは、価値提供を楽しみながら進めることです。お伝えした内容がしっかり伝わって、実際にそれを実践していただいていると聞いて、とても嬉しいです。学びを楽しみながら進めることが、最終的な成果に大きく影響すると思っています。

今後、研修を受けようか迷っている方に向けて、どんなメッセージをお伝えしますか?

【西野】そうですね、迷っている方に対しては、たくさんの選択肢がある中で、この研修を受ければ絶対に後悔しないと思います。実践的で楽しく学べる内容が充実しているので、迷わずぜひ受講してみてほしいですね。きっと得るものが大きく、受講後に新たな視点で仕事に取り組めると思います。

ありがとうございます。後悔しないと感じていただける研修を提供できていること、とても嬉しく思います。私たちも受講してくださる皆様に、より価値を感じてもらえるよう、日々改善を重ねています。研修を通して、さらに多くの方に実践的なスキルや楽しさを提供できるよう、これからも努力してまいります。

今後のチャレンジと未来への展望

最後に、旭化成として、また西野さんご自身として今後チャレンジしたいことがあれば教えてください。

【西野】はい、まずは社内でのアジャイルの浸透をしっかり進めながら、自分自身のケイパビリティをさらに高め、それを周囲に還元していきたいと考えています。そして、社外にもアジャイルの価値を広め、日本企業全体の底上げに貢献していきたいと思っています。

もちろん、会社内で事業を進めて成果を出していくことが軸足ではありますが、他の企業とも協業しながら、旭化成で培ったプラクティスを積極的に共有していくことにも力を入れていきたいです。社内外での成功事例を共有し、日本企業全体の成長に貢献できるよう取り組んでいきたいと考えています。

さらに、戦略的にどのように日本の企業全体に価値を提供していけるかを考え、経営層と相談しながら、一歩ずつ着実に進めていきたいと考えています。

それは素晴らしい目標ですね。私たちもアジャイル研修を通じて、日本企業の成長をサポートしたいと考えています。アジャイルがもっと一般的になれば、導入時の苦労も減り、企業全体の生産性向上に繋がると思います。共にアジャイルの価値を広め、日本のビジネス環境をさらに強化できるよう努めていきたいですね。

【西野】そうですね。私たちもその目標に向かって、一緒に力を合わせて進めていきたいと思っています。共にアジャイルの普及を目指し、日本企業の成長に貢献できるよう取り組んでいきましょう。

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